今回は、平林 祐二さんからの寄稿文を紹介します。平林さんは、嶌のまぐまぐのメルマガ「時代を読む」のお知らせにて今回の旅行に興味をお持ちいただき、ご参加くださいました。
いつも穏やかで笑顔を絶やさず、穏やかな方で、映画好きな一面もお持ちです。先日行なわれた嶌の出前講座にも足を運んで下さる、勉強熱心な方です。
以下、平林 祐二さんの文章をご紹介します。
「ウズベキスタン、白いシボレー Chevrolet ブランドの車ばかりが走る国!!」
2階にしか座席がない大型観光バスに乗り、明るいタシケント市街を初めて走ったときに目にした光景。広々した車道。高木が連なりゆったりした歩道が整備された贅沢な空間。両側に並ぶ重厚な沢山の建物。良い旅になりそうな予感がした。
旅行中渋滞には遭遇していない。車の数も日本とは比べ物にならない数しか走っていない。駐車した車や流れを見ていて誰もが感じ始めた不思議な感覚。車の形がほとんど同じ、しかも白。よく見ると1つのブランドばかりだということに気付かされる。形やブランドが違う、白以外の車を見かけるのは稀だ。
旅が終わりに近づいた頃、バスの中でついに誰かが質問した。現地ガイドのドスちゃんはその秘密をしっかり説明してくれた。
「車の輸入関税」がべらぼーに高率だという! なんと 100%! 400万円の車を輸入すると 400万円の関税が課せられ、それを売るなら 1000万円くらいになる。ツアー全体の印象は、ちょうど日本なら高度成長期の入口付近(1955-1960)にさしかかった時期だろうか。皆お金がなく、若者たちが一生懸命仕事に励んだ時代だ。シボレー以外の車を買おうなんて誰も考えない。この国の乗用車工場は「GMウズベキスタン」だけらしい。
この話を聞いて思った。GMウズベキスタンの工場誘致の条件だったのか?
この高関税率がどういう理由で決まったのか知りたい。車を売り込みたい国がひしめいている中で、よくもこんな税率を維持していること自体驚きを禁じえない。輸入関税は本来、他国の事情を考慮せず、国内経済を安定的に運営するための仕組み。高級車を求める車マニアには気の毒だが、私にはこの国に相応しい政策に映る。こんな政策を対外的に維持するのは真の独立国しかできないと思うから。
この国が成長を遂げたとき、極端な貧富の格差が生まれない可能性を秘めた素晴らしい仕組みがある。それは「土地の所有権」の形態だ。「ウスベキスタンでは,土地は,国が所有するのが原則である。したがって,国以外には,土地の使用権しか認められないのが原則である。」(*1)
独立を勝ち取り、ゆっくりとした国造りが始まっている。先進国の様々な公害事件を学んで生かしてほしい。天然ガスや石油、金などが採れることで、その「利権」をめぐって他国から狙われるのではないかという危惧を抱かざるを得ない不安もあるが、最終日に出会い交流した、目を輝かせて学びたい意欲に満ちた若者の姿が眩しい。
ツアーの最大の収穫は、「主権を持った独立国」の気概を感じたことだった。どこかの国のように、形だけの「独立国」に陥らないよう、若者がしっかりこの国の未来を築いてほしいと願ってやまない。
(*1)法務省「ウズベキスタン共和国の不動産登記制度概観」
http://www.moj.go.jp/content/000010288.pdf