アラル海への道

20世紀最大の環境破壊といわれるアラル海、漁村ムイナクに残された『船の墓場』と評される漁船の残骸

今回は、日本ウズベキスタン協会会員の千葉百子さんからの寄稿文を紹介します。千葉さんは、アラル海やチェルノブイリの健康被害を長年調査、研究され、何度もウズベキスタンを訪問されているエキスパートです。今回、アラル海を訪問した際、参加者の皆さんにアラル海沿岸の健康被害に関するお話からチェルノブイリの現状などをわかりやすくご説明いただきました。

以下、千葉さんの文章をご紹介します。

千葉百子さん

ずいぶん昔のことですが、学生の頃、「蒼き狼」(井上靖著)を読んだのが中央アジアに少し興味を持ったはじめでした。それから数十年の後にカザフスタン、ウズベキスタンへ何度も足を運ぶようになりました。はじめてウズベキスタンを訪問したのは1999年のこと、タシケントの国境なき医師団の事務所へアラル海問題の現状について話を聞きに行きました。そして当初はカザフスタン側からアラル海を見ていて、2007年にウズベキスタン側、タシケント→ヌクス→ムイナク→アラル海へ行きました。今回のアラル海へのルートと同じです。道幅が広くなり、舗装されていて、沿道にサクサウールの植樹もみられました。自動車と混在して大通りを行く荷物を満載したロバを今回は二度しか見ませんでした。

アラル海に向かうバスをパトカーが先導。その脇を荷物を引くロバが通る

アラル海モニュメント、白い四角錐のすぐ下まで水を湛えていたアラル海を想像してください。船の墓場といわれている古い漁船が散在しているところまで階段をたくさん下りました。旧湖底です。水は見えません。はるか100㎞位先まで行けば水を見ることが出来るかもしれません。わずか半世紀で自然環境がこんなに変わった、人為的な行為で。誰が言い出したのか、アラル海の縮小は20世紀最大の環境破壊といわれます。それを実感できたこの旅の意義は大きいと思います。

砂漠化防止のため沿道やアラル海に植えられているサクサウール

勝手な想像ですが、今回の旅の計画は川端理事長が「あれも見て欲しい。これも経験して欲しい」という真心の結晶で、時間的な制約から妥協した点も多々あったでしょう。それをドストンさんが上手にフォローして、まるで日本人のような的確な日本語で、歴史的な知見も併せて説明してくださったことは旅の意義がさらに充実されました。ドストンさんももっといろいろお話してくださりたかったでしょうけれど時間との兼ね合いを上手に使って名解説者でした。

様々なお話を織り交ぜ、盛上げてくれたドストンさん

また、参加者の皆さんはお気づきでしょうが、ヒヴァという世界遺産の中に東京農工大学という日本の大学名を冠した施設『Cocoon(コクーン)』(※)を開設し、活発に営業を続けているという事実、「日本女性 ここにあり」乾杯!

ヒバ・イチャンカラ内にある『Cocoon(コクーン)』

タシケント、ヌクス、アラル海、ヒヴァ、サマルカンドを巡って(残念ながらブハラへは行きませんでしたが)やはり人に勧めるならサマルカンドだな、と思いを強くしました。

サマルカンド・ウズベキスタンの英雄ティムールとその一族のお墓『グーリ・アミール廟』

嶌会長には協会設立20周年の行事としてこの旅を立案くださり、全行程をご一緒くださり、ありがとうございました。

(※)『Coccon(コクーン)』とは
JICA 『草の根支援プロジェクト』として、2009 年から東京農工大学とウズベキスタン共和国の国立養蚕研究所、ビジネスウーマン協会と協力し『ウズベキスタン共和国 シルクロード農村副業復興計画-フェルガナ州における養蚕農家の生計向上モデル構築プロジェクト-』を実施してきました。このコクーンは、ヒヴァ・イチャンカラのクトゥル・ムラド・イナック・メドレセの中にあり、女性の自立支援を目的として伝統的な絹織物「アトラス」を使って制作した小物を販売しています。

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